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病気Q&A -心臓疾患 編-

心臓疾患についての一般的な疑問について質問にお答えします。

急性心筋梗塞

心臓の筋肉(心筋)を栄養する血管である冠動脈が閉塞することで時間経過とともに心筋が壊死していく疾患です。発症とともに不整脈や心筋の破裂などさまざ まな合併症を併発するため突然死の原因となりえ、少しでも早い治療が必要となります。最近では食生活の欧米化などの影響で若年化が進んでおり、30や40 才台での発症も珍しくなくなりました。

狭心症

心臓の筋肉(心筋)を栄養する血管である冠動脈が狭窄することで発作的に前胸部の締め付けられるような、圧迫されるような痛みを自覚する疾患です。

慢性心不全

慢性心不全とは慢性的な心筋障害が原因で心機能が低下し、体中の臓器に十分量の血液を絶対的、相対的に拍出することができない状態をいいます。 あらゆる心疾患によって引き起こされる可能性がありすべての心疾患の終末的な病態ということもできます。

心房細動

加齢とともに増加し、70歳代の5%、80歳代の10%程度の割合で起こる比較的起こりやすい不整脈です。日本国内に約130万人いるとされており、若年者に起こってもそれほど珍しいものではありません。

急性心筋梗塞

①急性心筋梗塞になるとどんな症状がでるのですか?

典型的には前胸部を中心とした“締め付けられるような痛み”もしくは“押されつけられるような感じ”が持続し、冷汗や吐気などを伴います。その症状は冠動脈が閉塞した場所より先の心筋が壊死しきってしまうまで継続します。痛みの程度は我慢できないほどではない強さであることも少なくありません。なかには胃(みぞおちあたり)の痛み、歯痛、肩が重たくなるなど非典型的症状で発症する場合もあります。

※糖尿病の人では神経障害のため無症状で発症することもあります(痛みを感じる神経の障害のため)


②冠動脈はどうやって閉塞するのですか?

心筋梗塞が発症する土台は高血圧・脂質異常症・糖尿病といった生活習慣病や喫煙などを原因とした動脈硬化にあります。動脈硬化を起こした血管は上図の一番左の絵のように粥種(プラーク)といわれるさまざまな物質が蓄積されたコブのようなものができます。粥種の一部が破たんする(真ん中の絵)とその部位に血栓(血のかたまり)を形成するようになり、その血栓が冠動脈を完全に閉塞してしまい(一番右の絵)急性心筋梗塞が発症します。血栓が形成される一連の流れはほんの一瞬で起こるため心筋梗塞の症状は突然自覚するわけです。


③急性心筋梗塞を疑うような症状がでたときにはどうしたらいいのですか?

ためらわずにすぐ救急車を呼んでください!急性心筋梗塞は冠動脈が閉塞して徐々に心筋が壊死していく病態ですから1分でも早く閉塞した血管を再開通する必要があります。壊死してしまった心筋が元に戻ることはありません、急性心筋梗塞は時間との勝負です。

また、他人が急性心筋梗塞を疑うような症状を訴えたときには救急車を呼ぶのと同時に可能ならAEDをいつでも使えるように用意してください。急性心筋梗塞を発症すると致死的な不整脈を生じる可能性がありますので意識がなくなった場合などはすぐにAEDを装着しましょう。

冠動脈造影検査(正常血管)

冠動脈造影検査(正常血管)


④急性心筋梗塞はどうやって診断するのですか?

多くの場合は自覚症状と心電図で診断可能です(補助診断として血液検査や心臓超音波検査も行ないます)。冠動脈のどの場所がどのように閉塞しているかを判断するためには冠動脈造影検査を行ないます(写真のように冠動脈を評価することが可能です)。


⑤治療法は?

可能な限り早期に閉塞した血管を再開通させて心筋に血流が流れるようにすることが最も重要です。その方法として一般的に薬剤(血栓溶解剤)と心臓カテーテル治療(経皮的冠動脈形成術)がありますが、日本では(高槻市でも)カテーテル治療を行なうことが可能な施設が数多くあるため多くの場合心臓カテーテル治療が行なわれます。


⑥急性心筋梗塞はどうすれば予防できますか?

動脈硬化の主な原因となる肥満・タバコ・不規則な生活・ストレスなどからの離脱や高血圧・脂質異常症・糖尿病といった生活習慣病のコントロールがなによりの予防法となります。


⑦心筋梗塞は治りますか?

壊死した心筋が元どおりになることはありません。急性期をのりきったあとも生涯にわたって薬物療法を継続していく必要があります。下記に代表的な薬剤を示します。

抗血小板剤(バイアスピリンなど) ⇒血栓をつくらないようにする薬剤

心筋保護剤(ACE阻害剤やβ遮断薬など) ⇒ダメージをおった心筋を保護する薬剤

HMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン) ⇒コレステロールを低下させると同時に粥種を安定化させて破たんすることを予防する薬剤


⑧森内科で急性心筋梗塞の治療はできますか?

急性心筋梗塞の治療は⑤でもありますようにできるだけ早い血流の再開を得ることであり心臓カテーテル検査や治療を行なう設備の持たない当院では残念ながら治療することはできません。時にあまり強くない胸の症状のために当院を来院されそのときに急性心筋梗塞と診断することもありますがすぐに大阪府三島救命救急センターなどの心臓カテーテルの可能な施設を紹介しております。尚、急性期をのりきって退院後の治療(陳旧性心筋梗塞)は行なっておりますのでいつでもご相談ください

狭心症

①狭心症と急性心筋梗塞の違いはなんですか?

“狭心症”

⇒粥腫のため血管が狭窄し血流不足になる(心筋は壊死しない

“急性心筋梗塞”

⇒粥腫が破たんして血栓が形成され血管が閉塞心筋が壊死する

狭心症では血管の狭窄のため心筋に完全に血流が流れなくなるわけでなく、あくまで血流不足の状態に陥ることで胸痛などの症状が出現します。


②狭心症の症状の特徴は?

労作によって心臓に負担がかかり心筋は普段より多い血液を必要とするわけですが、血管狭窄があることで相対的に血流不足となり狭心症の症状が出現します。典型的な症状としては前胸部を中心とした“締め付けられるような痛み”“押さえつけられるような感じ”ですが、急性心筋梗塞とは異なり数十秒~数分で消失します。冠動脈を拡張する薬剤(硝酸剤)が効くのも特徴の一つです。


③血管が痙攣するタイプの狭心症(冠攣縮性狭心症)とは?

冠動脈が痙攣すること(スパズム)で狭窄をきたしたのと同じ状態になり血流不足のためおこる狭心症のことで“冠?縮性狭心症”もしくは“異型狭心症”といいます。特徴として夜間や明け方などの比較的ゆっくりしているときにおきやすく、多くの場合硝酸剤は著効します。ただし中には痙攣が強すぎて冠動脈閉塞までいたり急性心筋梗塞となることもあります。基本的には薬物での治療となります。


④どうやって診断するのですか?

自覚症状があるときに心電図をすると右図のようにST低下という特徴的な変化がみられることが多く診断は比較的容易です。しかし都合よく受診時に症状があることもあまりないために、マスター2段階試験、トレッドミル、エルゴメーターなどによる運動負荷心電図(故意に心臓に負担をかけて前後の心電図でST低下がでるかどうかみる検査)を行ないます。

その他には心筋シンチ、冠動脈CTや冠動脈造影検査などが診断のために行なわれます。特に冠動脈CT検査は近年のCTの性能の向上から少ない侵襲でかなり明瞭に冠動脈が描出できるようになっております。典型的な場合は自覚症状のみで診断可能であり、当院ではマスターダブルと合わせて診断を行ない必要時には心臓カテーテル検査の設備をもった医療機関への紹介を行なっております。


⑤治療法は?

狭心症の診断がつくと冠動脈の狭窄の部位、程度の評価のため一般的には冠動脈造影検査を行ないます。そのうえで薬物療法心臓カテーテル治療(経皮的冠動脈形成術)バイパス手術の中から最適と思われる治療法が選択されます。


⑥狭心症の発作がでたときにはどうすればいいのですか?

<診断がすでについている人>

⇒いつもと同じくらいの症状で硝酸剤の舌下や安静にて症状が治まる時は次回受診時に主治医に報告してください。ただしいつもよりも持続時間が長く、硝酸剤の効果がないときは救急車を要請してください。

<診断がついていない人>

⇒その時に症状が治まってもできるだけ早めに医療機関を受診してください。症状が頻回におこったり、いつまでも治まらない場合には救急車を要請してください。

※一般的に狭心症は数十秒~数分で症状は消失します。それ以上持続する場合、硝酸剤の効果がない場合、安静時にも出現する場合は重症の狭心症もしくは急性心筋梗塞の可能性があるため必ず救急車を要請してください。


⑦予防法は?

全ての動脈硬化を原因とする疾患と同様に動脈硬化の主な原因となる肥満・タバコ・不規則な生活・ストレスなどからの離脱や高血圧・脂質異常症・糖尿病といった生活習慣病のコントロールがなによりの予防法となります。

慢性心不全

①どんな症状が出現しますか?

労作時呼吸困難、全身倦怠感、息切れ、易疲労感、夜間の咳や呼吸困難、浮腫などが主な症状で、それ以外にも食思不振、便秘、頭痛など非特異的な症状が起こることもあります。ただし高齢者の場合にはこのような症状がなかなか出現しないこともあり注意が必要です。


②慢性心不全の原因はなんですか?

心筋梗塞や狭心症、心筋症、弁膜症、不整脈などのあらゆる心疾患や高血圧によるものが多いですが、中には甲状腺疾患、糖尿病、サルコイドーシス、栄養障害、薬剤などといった全身疾患や外的因子がその原因となることもあります。


③診断はどのように行ないますか?

自覚症状、胸部レントゲン(↓写真参照)や心エコーといった画像所見、BNP/NTproBNPなどの血液検査にて診断します。

BNP(NTproBNP)とは?

⇒心臓の負担の程度を評価する血液データです。高値であればあるほど心臓に負担がかかった状態であることを示しており、大まかな基準としてBNP(NTproBNP) 100(500)pg/ml以上で心不全の疑いが強く、BNP(NTproBNP)
200(1000)pg/mll以上でかなり心臓に負担がかかっていると考えます。BNPとNTproBNPのデータ的な意味合いはほぼ変わりありませんが測定方法がやや異なり森内科ではNTproBNPを測定することが多いです。


④心不全は治りますか?

生活指導・薬物療法にてコントロールする疾患であって完治することはありません。ただし適切な治療を行なっていれば多くの場合日常生活を支障なく過ごせます。

当院では循環器専門医による専門的な治療を行なっております。


⑤慢性心不全と診断されたときに日常生活で気をつけることは?

体重測定:短期間での体重増加は体液貯留の可能性を表しており心不全増悪の可能性が高くなります

血圧測定:高血圧はダメージのある心臓にさらなるダメージを与えるため十分に血圧を下げることが必要です

塩分制限:軽症心不全であれば1日塩分7g以下、重症心不全であれば1日3g以下が目標になります

内服加療:内服薬の中には中断することでリバウンドのように急激に心不全が悪化することがありますのできめられた内服は毎日しっかりと飲んでください

水分制限:体に入った水分はすべて心臓が処理しなければなりません。軽症心不全では水分制限は特に必要ありませんが重症心不全の方は基本的には水分摂取量を減らし心臓の負担を減らす必要があります。ただし体の調子が良好で体重が減ってきているような場合には水分摂取量を増やしても大丈夫です(医師に相談してください)。


⑥血圧が高いわけではないのに降圧剤を処方されているのですが大丈夫ですか?

多くの心不全薬(心臓への負担を減らす薬剤)は同時に降圧効果も持っています。血圧が高くないのに降圧剤が処方されている場合、降圧効果というより心不全に対して処方されているので安心してください。


⑦慢性心不全の薬物治療について教えてください

代表薬(森内科):イミダプリル塩酸、スパシオール

血管拡張作用とともに心臓にストレスを与えるホルモンを抑制することで心臓への負担を軽減します。

※導入初期に腎臓機能の増悪やカリウムという電解質の上昇(カリウムの上昇は不整脈を惹起します)をきたすことがあり内服開始後は血液検査による腎臓機能やカリウムのCheckが必ず必要です。

代表薬(森内科):ロサルタンカリウム、ディオバン

基本的にACE阻害剤と大きな違いはありませんがACE阻害剤の副作用の1つである空咳を起こしにくいです。

代表薬(森内科):アーチスト、ウェルビー

脈拍数を抑えるとともに(ACE阻害剤と同様)心臓にストレスを与えるホルモンを抑制することで心臓への負担を軽減します。

※長期的には心不全に対し非常に効果のありますが、内服開始初期は心不全が悪化する可能性もあり少ない量から慎重に増量していく必要があります(特に重症の心不全の場合)

代表薬(森内科):ラシックス、ダイアート

尿量を増やす薬剤です。体内の水分量を減らすことで心臓の負担を軽減します。

心房細動

①心房細動とはどのような不整脈ですか?

心房細動は心房がけいれんするように小刻みにふるえて規則正しく心房が収縮できなくなった不整脈です。心電図では通常心拍(脈)はほぼ規則正しくうちますが、心房細動になるとその規則性が失われ上図のように波形がバラバラ(不規則)になります。

発作的に心房細動を繰り返すパターン(発作性心房細動)と常に心房細動のパターン(慢性心房細動)に大別されます。


②どのくらいの患者さんがいますか?

心房細動は加齢とともに起こりやすくなる不整脈で年々その数は増えていっています。今後高齢化が進むとともに2030年頃には日本で100万人を突破するといわれています。


③どのような症状がありますか?

無症状であることが多いのですが、動悸や胸痛、胸部圧迫感、息苦しさなどの症状を自覚することもあります。


④心房細動になると何が困りますか?

これは大きく二つに分けて考えてください。

A.心房細動そのものよるもの

B.塞栓症:代表的なものとして脳梗塞

A.②でも説明しているように心房細動によってさまざまな自覚症状が出現します。心機能が悪い人の場合は心不全の増悪の可能性があります。

B.心房細動になると心臓内での血液の流れによどみができるため心臓内に血栓を形成しやすくなります。この血栓が遊離して心臓外にとんでいくことで塞栓症 (血栓が血管を閉塞すること)を発症する可能性があります。代表的な疾患としては脳梗塞(脳血管が血栓によって閉塞することによって発症する)があります。(左図参照)


⑤治療法は?

1. 脳梗塞予防

2.心房細動そのものへの治療

        A.薬物治療

        B.アブレーション

1.多くの場合は脳梗塞予防のためにワーファリンやプラザキサといった血栓形成を抑制する薬剤を内服します。

2.心房細動は頻脈になることが多く脈拍を抑制する薬剤や抗不整脈薬を使用します。薬がなかなか効かない場合などにはカテーテルを使用したアブレーション治療を行なうこともあります(アブレーションを行なう場合は当院より専門施設に紹介する形になります)。

当院では自覚症状の有無、年齢、心疾患の有無、合併症などを考慮した各人にあった治療を行なっております。

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